学習院大学新聞(抜粋)
1999年10月1日発行第151号より転載させて頂きました。

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目 次
本学仏文科 辻 邦生元教授逝く

ミイラと教授と放射能

アベック昇格・バトミントン部

デスクの片隅


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本学仏文科 辻 邦生元教授逝く

 戦後を代表する小説家で、本学仏文科の元教授・辻 邦生氏が、7月29日、心筋梗塞のため長野県軽井沢町の病院で亡くなった。73歳だった。

 1925年、東京本郷生まれ。幼い頃から小説家を志し、旧制松本高校を経て、24歳のとき東京大学仏蘭西文学科に入学。在学中はスタンダール、トーマス・マンに傾倒する。
 56年には非常勤講師として本学文学部のフランス語の授業を担当。翌年からは院生時代に結婚した佐保子夫人と共にフランスに留学した。

4年間に及んだ欧州留学から61年に帰国すると、本格的な執筆活動を開始。講師のかたわら連載した処女長編「廻廊にて」で近代文学賞を受賞した。以後、「夏の砦」、「安土往還記」(芸術選奨新人賞)、「背教者ユリアヌス」(毎日芸術賞)、辻家の一族をたどった「銀杏散りやまず」等の作品を発表。東西の歴史に題材をとり、叙情性豊かで堅固な構想の小説で知られ、作家としての評価も高かった。

 76年、本学仏文科の教授に着任。ラシーヌやプルーストを教材に、「想像力」を授業のテーマとして「小説とは何か」を学生と共に考え続けた。93年に退職。
 病苦のなか、完成に10年を費やした「西行花伝」(谷崎潤一郎賞)が遺作となった。

素朴な疑問
ミイラと教授と放射能

 散歩の途中で見つけたのは、重々しい扉に閉ざされた真四角なコンクリの建物。入口には年代測定室と書かれた銅版が。こんな目立たないところで一体何を? と素朴な疑問を抱いて、乃木館隣の林にある建物のお邪魔しました。
 迎えてくださったのは、自称年齢測定不能の学者さん。早速疑問をぶつけてみると・・・「空気中には放射性炭素C14があり、5,700年で半減します。物質の中で減ったその量を測れば年代測定ができるというわけです。現在ここでは外部から依頼された物を測定しています」
 彼の案内で実験室に通してもらい、依頼品の数々を見せてもらいました。ビニール袋に入っていたのは、遺跡や工事現場から出た木炭や土塊。珍しい物ではインディアンの頭の皮も測ったといいます。ちなみに測定室にある機械は全て彼の手作り。ところで謎の学者さんの正体は木越邦彦名誉教授。実は本誌147号で取り上げた、理学部にあったミイラも研究に使ったとか。今日も先生は黙々と過去と対話していらっしゃいます。

アベック昇格・バトミントン部

 4部昇格を目指し、秋季リーグを迎えた本学バトミントン部。選手各々が持ち味を発揮し、リーグ戦全勝で入れ替え戦に臨んだ。相手を寄せつけない、圧倒的な強さで男女とも大勝。念願の男女アベック昇格を成し遂げた。
 「とにかくうれしい」。試合後の松木勇樹(済3)、猪野志芳(日2)両主将の気持ちは、至って簡潔な言葉で表された。他に表現が見つからなかったのだろう。その分、言葉に思いが凝縮されていた。男女共に4部へ昇格したのだ。
 9月中旬より始まった関東学生バトミントン秋季リーグ戦(5部)。男子は松木主将と柿沼仁選手(物3)の活躍で白星を重ね、全勝で5部1位となった。
 一方女子も猪野主将を中心に、危なげない試合を展開し、全勝で1位。男女共に入れ替え戦出場を果たした。
 迎えた9月25日。神奈川大平塚校舎にて入れ替え戦が行なわれた。
 男子は順天堂大と対戦。まず松木選手が出場し第1、第2セットともに15-4の大差で勝利した。スマッシュのスピード、コントロール共に切れ味を見せる。相手の正面を突く絶妙なるスマッシュを連発し、得点を稼いだ。2番目に出場した柿沼選手もこれに続く。相手の激しいショットもカットし、ラリーに持ち込む粘り強さが光った。本学が昇格にリーチをかける。しかし次のダブルスで敗れたため、勝負の行方は松木・柿沼ペアへ委ねられることに。第1セット、序盤は一進一退の攻防が繰り広げられる。しかし、中盤以降は実力の違いを見せつけた。ラリーを続ける中で相手の隙を突き、すかさずスマッシュを放つ。10点を連取し、15-4で第1セットを取った。続く第2セットも本学が15-3と圧倒。ここに4部昇格が決定したのである。
 お茶の水女子大と対戦した本学女子は猪野主将が予定通り、まず勝ち星を挙げる。ポイントとなったのは次の仙洞田綾選手(日2)の試合である。第3セットまでもつれる。大熱戦となった。ミスを最小限に抑える一方で、粘り強さを発揮し相手のミスを誘う。11-4で第3セットを取り、勝利を挙げた。この1勝が4部昇格を大きく引き寄せた。続く猪野・平井ペアは11点リードした第2セット終盤で、勝負を焦り追い上げられるも、セットカウント2-0で勝利。男子と共に4部昇格を決めた。
 「周りの声援に後押しされた」。松木、猪野両主将は秋季リーグをこう振り返った。部員全員がぐるりとコートを囲み、ワンプレイごとに一喜一憂する。この一体感がコート内の選手の精神的な支えとなり、数々の好プレイを導いた。だからこそ、男女4部昇格の快挙を可能にしたのである。

デスクの片隅

 「私の首のように/茎が簡単に折れてしまった/しかし菜の花は/そこから芽を出し/花を咲かせた/私もこの花と/同じ水を飲んでいる/同じ光を受けている/強い茎になろう」これは不慮の事故で手足の自由を失った、星野富弘さんの詩である我が大学新聞社では前号で3年生が引退し、2年生の私は「長」の付く役職に就くことになった。人の上に立てば、仕事の量も責任も増してくる。当然ストレスもたまり、周りの人間への愚痴も多くなる。苦悩から逃げ出したい気持ちにもなったそんなとき、星野さんの詩を読んだ。体の自由を失い、終わりなき苦しみと闘いながらも、強く生きようとしている。そんな星野さんが、たくましく感じられた大学新聞の仕事には、苦しみと共に解放感や達成感がある。つまりゴールというものが存在するのである。しかし、私はゴールすることを考える前に、弱音を吐き、現実から目をそらそうとした。自分の弱さを恥ずかしく思ったかつて、先輩方もこの時期に、私と同じ苦しみを感じたに違いない。しかし、それを乗り越えたからこそ、50年もの歴史が築き上げられたのである。私も「強い茎」になろう。